Tomomiさん
(個人情報保護法により、お名前のみの発表とさせていただきます。)
賞品:賞金3万円+スリープトラッカープロ・エリート<レディース>
30点の顔
「スッピンで誰だか分かってもらえなかった。」
世の中にそう嘆く女性がいる。
とても人事には思えない。
私はこの間、仕事へスッピンで行ったことが原因で、半日の有給をもらった。
年に2回程しかもらえない有給。
その1回を、あっけなく昇華した。

仕事の開始時刻が過ぎたことを知らせる、上司からの電話。
全身の血の気が引いた。
社会人になってから、初めての寝坊。

まだ半分寝ている目をこじ開け、コンタクトを入れた。
顔を洗う、というより顔を濡らした。
荷物をつかみ、玄関を飛び出した。
電話を受けてから家を出るまで、所要時間1分。
鍵をかけたかさえ覚えていない。

「すみません、寝坊しました!」
落ち着かない鼓動と弾む息のまま、上司のもとへ向かった。
「…………。」
数秒の沈黙の後、上司から発せられた言葉に耳を疑った。
「Tomomiさん?」
「ひどい顔よ。そんな顔じゃ30点。とてもじゃないけど、人前に出せません。
一度、化粧をしに家に帰りなさい。今日は、仕事は午後からでいいから。」

状況が解らなかった。しかし、ざわめく同僚の声が、解りたくもない事実を解らせた。
私の顔を直視しない皆の視線が、痛かった。

家に帰り、昼まで時間のある私は、普段は30分かける化粧に、1時間を費やし、デパートにも立ち寄った。
「しみもしわも、一度刻まれたものは、薄くすることはできても消し去ることはできないんですよ。
心の傷と一緒ですね。」
そう店員に言われ、私は新しい化粧品を買い、いつもの私で職場へと向かった。
もう2度と、寝坊なんてしてやるものか。